従来の空調とは大きく異なり、「温度のバリアフリー」とも呼ばれる「全館空調」。快適な住空間づくりにつながるだけでなく、光熱費の削減にも効果があると期待されている新しいシステムです。その導入メリットは、どんな点にあるのでしょうか。マイホームを建てる前にぜひ知っておきたい全館空調について解説していきます。
全館空調とは?
住宅や建物全体の温度や湿度を一括で管理して、快適な空間を作る空調システムが「全館空調」です。対して、リビングや寝室、子ども部屋など、部屋ごとに独立した空調設備を設置する方式を個別空調と言います。日本の家庭では、各部屋にエアコンを設置する個別空調が広く普及しています。
海外では個別空調より全館空調が一般的
日本では個別空調が一般的ですが、欧米など海外では全館空調がスタンダードです。その理由には文化的・建築的背景があり、欧米の場合は住宅の構造そのものが全館空調に適しています。例えば、全館空調を導入するためには、天井裏や床下などにダクトを配管するためのスペースが欠かせません。加えて、冷暖房を行う心臓部とも言える中枢装置を置くための機械室も必要になるため、住宅スペースに余裕が必要です。また、海外は日本と比較してエネルギーコストが低く、電気式の大型空調システムを運用しやすいという背景もあります。
日本では全館空調は不向きなのか?
海外と比較して、全館空調が日本の住宅に広まらない理由の一つが、住宅性能にありました。全館空調が性能を十分に発揮するには、高気密・高断熱な住宅であることが必須です。逆に言えば、全館空調は高断熱・高気密な建物との相性が非常に良く、冷暖房効率が格段に高くなり、光熱費のコストダウンにつながります。
全館空調を導入するための準備
全館空調の導入を検討するには、以下のような準備と手順ですすめるとよいでしょう。
建物の構造と断熱性の確認
断熱性能が低い住宅では、全館空調の冷暖房性能を引き出すことができないため、壁や床、窓のサッシやガラスの性能などを含めた総合的な気密性を確認する必要があります。
空調システムの選定
全館空調には、いくつかの種類があります。「ダクト式全館空調」は1台の大型空調機から、各部屋にダクトを通して空気を送る方式。室内機が目立たず、すっきりとしたデザインになる点が特徴です。ただし、温度の設定を中枢設備で行うため、部屋ごとの細かな調整ができません。一方、「各室吹き出し型」は個別制御機能があり、部屋ごとの温度コントロールが可能です。デメリットは、各部屋に制御システムが必要な点で、導入費用がやや高くなります。これらの方式の他に、天井や壁のパネルを通して輻射熱で冷暖房する方式、床下空間に空調を設置して足元から冷暖房する方式などがあります。
ダクトや配管の設計
いずれの方式においても、冷暖房設備用のダクトを設置するスペースが必要です。天井裏や床下に十分にスペースを設けられるかどうか、家全体の設計を全館空調向けにしなければなりません。
制御・操作システムの選択
部屋ごとの温度管理ができる「ゾーン管理方式」やスマートフォンから操作するスマートホーム連携など、コントロールシステムをどのような形で行なうのかを決め、必要に応じた機器を選択します。
全館空調を導入する際の注意点
全館空調は、1つの冷暖房設備を使って住宅全体の空調を行うため、中枢機械であるジェネレーションシステムそのものが故障すると、全室に影響が出てしまいます。また個別エアコンと同様にヒートポンプ方式を採用するので必ず電気が必要で、停電に弱い点はデメリットです。
新築時こそ全館空調を導入する絶好のタイミング
全館空調は、空気の質が良くなりやすく、長期的に見ると光熱費が安定するという大きなメリットがあります。その一方で、設備を組み込むには設計段階から検討する必要があり、後付けが非常に難しい設備でもあります。そのため、全館空調を導入するには、新築時が絶好のタイミングです。住空間の快適性や効率、エネルギーコストの削減を重視したマイホームづくりをお考えの場合は、ぜひ全館空調を検討してみてください。ヘスタホームでは、お客様のご要望を伺い、最適なアドバイスでマイホームづくりのお手伝いをしています。ぜひお気軽に、ご質問、ご相談ください。